住宅設備用エアコンとは?
家電量販店エアコンの裏モデルが住宅設備用エアコンです。
目立たないから裏モデルでした。過去形の理由はネット通販で誰もが購入できるからです。代表サイトをチェックしてみましょう。出品数が最も多いのは楽天市場。Amazonは品番での検索が必要。Yahoo!ショッピングは楽天市場とAmazonの中間ですね。
次のサイトで「住宅設備用エアコン」と検索してみてください。
- 楽天市場 ・・・ 多い
- Yahoo!ショッピング
- Amazon・・・品番の指定が必要
誰が買うの?
エアコンを使わない人が買います。
住宅を造って、売ったり貸したりする人たちです。具体的にはディベロッパー、ビルダー、工務店、電気工事屋、不動産会社、大口の不動産オーナーです。
使う人を英語ではユーザーと呼びます。住宅設備用エアコンの購入者はエアコンを使いません。そのため、サブユーザーと呼びます。
取り付け場所は?
次の3つです。
- 賃貸住宅
- 新築住宅
- 中古住宅(リノベーション)
ビルトインコンロ・食洗機・浴室乾燥機などは住宅設備ですよね。住宅設備としてエアコンが含まれているのです。
行政関連の案件もあります。災害発生時の仮設住宅のエアコン、空港など騒音地域の住宅にエアコン設置、自衛隊の宿舎、米軍関連施設などです。数万台規模の単位で厳しい価格競争が繰り広げられます。
メーカー公式サイトの公開
住宅設備用エアコンは裏モデルというスタンス。メーカー公式サイトでは非公開として、紙のカタログを配布が原則でした。ところが、住宅設備用エアコンがネット通販に多数あります。
どうなるでしょうか?
メーカー公式サイトに情報がなければ、サポートセンターにお問い合わせします。
個人ユーザー、住宅設備用エアコンを知ったサブユーザー、卸業者からのお問い合わせが増加しました。ややこしい問い合わせとクレームにより、対応コストが増えます。サポートの窓口の精神的な対応負荷がかかります。
メーカー公式サイトでの積極的な情報公開に踏みきりました。
家電量販店エアコンとの違いは?
同じグレードのエアコンの機能はほぼ同じです。
ただし、ローコストのグレードには違いがあることがあります。例えば、センサーの省略、旧式のパーツ、リモコンホルダーの有無などです。付加機能がないエアコンなので、違いの実感がありません。
決定的な違いは次の通りです。
- 住宅設備用エアコンには定価がある。(ローコストモデル除く)
- 家電量販店エアコンにはない住宅設備用エアコン専売のグレードがある。
- 住宅設備用エアコンにだけ、200Vの機種、3,6kwの機種、補助金対象のZEH(ぜっち)機種がある。
住宅設備用エアコンはお買い得なのか?
驚愕の安さのタイミングがあります。ですが、家電量販店エアコンよりも割高なこともあります。
ネット通販では家電量販店エアコンと住宅設備用エアコンが併売されます。誰もが価格を知ることができるので、価格差が無くなりつつあります。
驚愕の安さの理由
住宅設備用エアコンを購入するサブユーザー。大企業だけでなく小規模の事業者も多いです。
次のことが発生します。
さらに
2つの理由が重なり合います。すると、台数限定で驚愕の安さエアコンがネット通販で登場します。
どのようなメカニズムでこの現象が発生するのか掘り下げます。
メーカーと卸の販促費
家電量販店でも住宅設備でも販売協力費があります。呼び方がいくつかあります。
- 販売協力費
- 販売支援金
- 営業補填
- 販売補填
物流費の充当、納入先の専用提案書、販売担当の研修教育費、クレーム発生時に対応に必要な費用を積み上げます。販促費が不足もありますが、販促費が余ることもあります。その場合、期末に大幅な値引きが施されます。
メーカーと卸の営業部門には売上と利益の目標があります。古い商慣習の業界なのでノルマは厳しいです。
計画の利益率の余裕があると、売上規模を拡大を目指します。取引の台数を増やして売上規模を拡大するために、利益率を度外視した値引きがあります。
わかりますね?
サブユーザーの在庫が過剰になります。そうなると、倉庫スペースが不足するし支払いのための現金化が必要になります。
サブユーザーの生業はエアコン販売ではありません。よって、販売価格の暴落はデメリットにならず、早期の現金化にメリットがあります。驚愕の安さでネット通販に流れるのです。
住宅設備用エアコンの特徴
家電量販店エアコンは季節変動の影響を直撃します。暑かったり、寒かったりするとエアコンの販売台数が増えます。
住宅設備用エアコンは、住宅の引き渡しに間に合う納入が必要です。そのため、季節変動の影響がごくわずかです。
深掘りしていきます。
納期の死守
住宅の引き渡し日は厳守です。住宅の規模が大きい案件はなおさらです。理由は取り付け工事がいるからです。エアコン本体の納入に合わせて、取り付ける人員を配置します。
もし納入ができなければどうなるでしょうか?
取り付ける人員の費用が無駄になります。さらに、後日、人員の手配ができなかったり、割高な料金が発生したりします。
相対取引
住宅設備用エアコン本体の価格は家電量販店エアコンよりも高いことがあります。
どういうことか、詳しく説明しますね。
住宅設備用エアコンの価格には段取りの費用が含まれます。大きめな案件のモデルケースを紹介します。
家電量販店エアコンと品番が違う理由
家電量販店エアコンは本体価格に標準取り付け工事をセットにして販売します。
住宅設備用エアコンは本体価格と相対取引で決めた付随作業で料金が変動します。付随作業を省くことで、本体価格が下がることもあります。値付け方法が異なるので、別々の品番にしています。
ここから深掘りします。
異なる商流
パナソニック・三菱電機・日立など国内シェアが高く大企業の組織を反映しています。
住宅設備の部門と家電量販の部門があります。
各々の部門で事業が成立しているので、取り扱う商品をわけたいのです。住宅設備の部門と家電量販の部門で同じエアコン本体の見積金額が違った場合を想像します。ビジネスが円滑に進みません。
継続案件
家電量販店エアコンのモデルチェンジは前年10月から始まり翌年の3月には終わります。時期が決まると新モデルに入れ替わります。
一方で、住宅設備は品番が指定されていることがあります。旧モデルと新モデルが混在を避ける傾向があります。規模が大きな案件では、新モデルに切り替わった後も旧モデルの仕様で生産して納入することもあります。
オープンプライス
二重価格の問題を是正するため家電量販店はオープンプライスを採用しています。
大型の家電量販店の誕生前は、街の電気屋さんを経由して販売されていました。1990年代よりも前ですね。そのころは定価設定があって、安くても3割引でした。ヤマダ電機を筆頭に家電量販店の勢力が拡大しました。大量仕入とメーカーへの定価設定の圧力によって、5割引を超えて9割引とかありました。
サブユーザー
エアコンを仕入れて販売するのがサブユーザー。となると、仕入価格が大切ですよね。
仕入価格を管理しやすくするのが掛け率です。仕入価格は定価にn%を掛けた数字と取り決めしておきます。
背景には住宅設備業界の商慣習が影響しています。仕入価格を確認するために電話をかけることが日常的です。定価の○○掛けですね。と、一言で仕入価格を回答できるようになるのです。